柴犬カレンダーの裏の、壁の穴
2013年 08月 01日
8月になりました。
家じゅうのカレンダーを1枚めくります。
サクの部屋には、不自然な位置に不自然に愛らしい「柴犬カレンダー」が掛けてあります。
これは数年前、サクの拳によってあけられた壁の穴を隠すために、サクが張ったものです。
じつは我が家の壁や建具、家具には、高校生だったサクによってあけられた同様の穴がいくつもあります。たいていは修繕をしましたが、サクの自室のこの穴だけは、自腹でなおします、とのことだったので、そのままになっているのです。
サクは高校時代、ずいぶん苦しみました。
親の期待に応えられそうもない自分、「これだ!」というものに巡り合えず進む道を見失ったままの自分が苦しくて、また、私の働きかけの全てが鬱陶しく重く、自分の価値も見失って、「こんな俺は生まれて来なければよかった」と言って暴れました。
私や主人に向かってくることをせず、こうして壁や家具に、ぶつけていたのです。
私の方も、追い詰めてしまっていることはわかるのに、やめたいのに、当時は”握っていたもの”を手放す勇気がなくて…。本当に申し訳ないことをしました。
その後サクは沖縄・宮古島へ渡り、1年弱ではありましたが実家を離れ、ダイビングのインストラクターになって帰ってきて、望んだサービス業の仕事に就きました。
そして今では、毎日楽しそうに仕事へ出かけ、日々の嬉しい出会いや発見、学びを話してきます、やかましいくらいに(笑)。
「俺は俺でしかない。お父さん(東大出の科学者です)にはなり得ない、なる必要もない。別の人間だから」
ときっぱり言うようにもなりました。
覚悟して実家を一度離れ、毎日海に潜り、見たことのない世界や、出会ったことのないタイプのワイルドな、いやワイルドすぎる人たちと関わりながら、自分を見出し育むことができたのだと思います。
私も、サクと、サクが出会ったすべての人たち、いろいろなものを流し去り癒してくれた美しい宮古島に、本当に教えられ、助けられました。感謝の気持ちでいっぱいです。
サクは今では、壁の穴を見ると
「誰だよ、こんなところに穴あけやがったヤツは。しっかしいいパンチしてるな」
とトボケて笑いますが、私はあの時期を思い出し、まだ、いろいろな思いがこみ上げます。
この穴は、サクがいつか稼いだお金で修繕すると言っていますが…、いつになるんでしょう(^^;)
「来年は何のカレンダー掛けようかなぁ」と言っていましたので、まだまだ当分先のことのようです。