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きっと誰かに手渡され、受け継がれる  ~映画『アリスのままで』

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若年性アルツハイマー病を発症した50歳の女性とその家族の葛藤。

主人公のアリスは名門大学で教鞭を取る高名な言語学者。三人の子どもの母親でもあります。
知的でウィットに富んだチャーミングな女性アリスも家族も、皆インテリ、という設定です。

アリスはアルツハイマーの診断を受け、やがては家族のことも自分のこともきっと忘れてしまう・・・と怯えながら、家族の支えを得ながら暮らしていきますが・・・


2006年の 『明日の記憶』 を思い出す本作ですが、いわゆるお涙頂戴の難病モノではありません。

少しずつ進行していく病気を、本人と、そして家族が受け止めていくその静かな描写は、ジュリアン・ムーア(この映画で、アカデミー賞の主演女優賞ほかたくさんの賞を獲ったのですね)の名演もあって素晴らしかった。
病気の進行を思い知らされる出来事と時間の経過、ひとつひとつが胸に突き刺さるようでした。


これまでは知性が自分を形づくっていた、でも今は、言葉に自分が届かない、という告白、
認知症介護のシンポジウムでの、患者としてのスピーチ・・・

「私は苦しんではいません。自分であろうとして闘っているのです」
「世界の一部であり続けるために、かけがえのない瞬間を懸命に生きています」


と、予め用意した原稿を、マーカーペンで辿りながら読み上げたシーン・・・

その他あちこちで、私は泣いてました。
(いつものことではありますが、今回は、気づいたら涙が出てた・・・というパターンです。)


このインテリ一家の中では "落ちこぼれ" で、母にも反発していた次女が、他の家族誰よりも母親の病をしっかりと受け止めて、母の尊厳を守ろう、自分が支えていこうという決意を見せるところがまた素敵でした。

母と娘という関係性を超え、人としてどう関わっていきたいか・・・、
自分はどうありたいのか・・・、
それを見せてくれる次女の姿は印象的で、心を打たれました。


たとえ記憶は薄れても、失われても、アリスがアリスとして生きた事実は決して消えることはない、ということ、
人がその人生でしてきたことの記憶は、きっと誰かに手渡され、受け継がれるということ、
私はそのことを、ラストシーンのアリスの言葉から、確信しました
by kktreasure | 2015-07-17 17:45 | 映画、テレビ、芸術

あなたの物語を大切にするカウンセラー郷家あかりの日常


by kktreasure
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