キンモクセイの香り
2011年 10月 02日
なんとなくもの悲しい・・・と思ったら、キンモクセイが香り始めているせいだった。
嗅覚ってすごい感覚だ。
キンモクセイの香りはまず初めに私を、
27歳で死んだ親友の弘美ちゃんと私が高校生だった頃に運んでいく。
私たちは、学校の大きなキンモクセイの木の前のベンチで語り合うのが好きだった。
花が咲くと、「いい匂~い」、「小さくて可愛いお花」、「ぜったいトイレの消臭剤の香りにキンモクセイは選ばないよネ~」などと言って笑った。そんな場面に連れて行かれてしまう。
それから、弘美ちゃんが自殺する前の年、1989年の秋、鬱病に罹ってた弘美ちゃんが
「さとこちゃんの手紙に『キンモクセイが咲いてるよ?気づいてる?』ってあるのを読んで初めて、自分が今、嗅覚を失ってることに気づきました。ショックです。大好きな花なのに・・・」
と書いてよこした手紙を思い出させる。
そして、1990年の秋に、その弘美ちゃんがいなくなってしまった世界に自分だけは残って、こうして今年もキンモクセイの香る季節を迎えてる・・・と思って、寂しくて泣いた時の胸の痛みを甦らせる。
もう20年以上経つのに相変わらずだ。
きっと一生、そうなんだろうな、と思う。
キンモクセイの季節は、彼女の逝った3月とともに、
優しくて聡明で可憐だった彼女が27歳の若さで生涯を終えてしまった意味や、自分ばかりが年を重ねている意味を、静かに問う季節だ。