「ただそばにいること」の持つ力
2017年 01月 08日
親御さんの介護をされている方が、
「自分は食事の用意や排泄の世話をしているだけで、これといったことを 何もしていない。母は昼間もほとんど眠っているから」
とおっしゃいました。
小さいお子さんと生まれたばかりの赤ちゃんと過ごしているお母さん(復職の予定なし)が、
「私は一日中、子どもたちのペースに合わせてダラダラ過ごしている。特に 何もしていない から達成感もないし、社会に対して申し訳ない気がしてくる」
とおっしゃいました。
私からみたらどちらの方も、何もしていないことなどなくて、偉大な仕事をしています。
"ただそばにいてもらっている" 人は、そのおかげで安心しているのですし。
哲学者の鷲田清一が著書の中で、「われわれの社会は、何をするわけではないがじっとそばにいるということの持つ力を忘れている」と述べていますが、その通りなだなぁと思います。
人の価値を、何かを産み出すこと・・・「生産性」で測ろうとする社会にいるから、そう感じてしまうのですね。
「"何もせず" 大事な人のそばにただ居ることしかしていない」人には、そうしている時間、そのことに意味を見出し、これでいい、と納得して過ごしてほしいですし、
そんなふうに "何もしていない(目に見える何かを産み出す活動をしていない)" と言う人が、胸を張り、安心して、その役割を果たしていて大丈夫な、懐の深い成熟した社会だといいなぁと思います